自分力を高める

巷の本屋を覗いてみると「○○力」というような本が目に付く。大概はビジネスに関すること、さらには生きることに関することが多いのだが、本書も例外なくビジネスでありながらも、「生き方」と言うところにも着目している。しかも岩波ジュニア新書からだしていることであるだけに、将来についてまだまだ不安の残っている10代、ないし20代の方々のために向けられている。

第1部「自分力とは」

そもそも「自分力」とはいったい何なのか。本書では、

成績や肩書きに縛られない、リスクを恐れずチャレンジする、コミュニケーション能力を高める、ワクワク感を大切にしてミッション、ビジョン、パッションを持つ本書裏表紙より

とある。しかし本章では著者自身の生い立ちを綴ると共に、「肩書き」や「企業ブランド」がいかに無力か、そしてそれらに縛られず「自分自身は何をしたいのか?」という問いかけをしている。他にも既成概念を壊し、グローバルの時代を生き抜くためには、会社とか、能力とかではなく、本当の意味での「自分」を高める事が大事であることを説明している。

第2部「自分力を高めるためのレッスン」

著者が自分力に気づいた一つのきっかけがある本の出会いである。同時に私の座右の本でもあるのだが、ルネ・デカルトの「方法序説」である。

「我思う、故に我あり」という言葉が出たことで有名なのだが、著者はそうではなく、「迷いの森」の一節である、

どこかの森に良い込んだ旅人たちは、あちらへ向かったり、こちらへ向かったりして迷い歩くべきではなく、いわんやまた一つの場所にとどまっているべきでもなく、つねに同じ方向に、できるかぎりまっすぐに歩むべきであって、その方向を彼らに選ばせたものがはじめはたんなる偶然にすぎなかったかもしれぬにしても、少々の理由ではその方向を変えるべきではないのである
デカルト「方法序説ほか」中央公論新社 2001年 p.32より

が著者の琴線に触れた。ただし、本書で取り上げられている一節は上記のものではなく、あくまで著者の記憶にあった一節なので、若干の差異はある。

その上で、自分力を高める、鍛えるためにはどうしたら良いのか、それぞれ考え方語学コミュニケーションリスク・自分の道と分けてレッスンを行っている。

最初にも書いたとおり本書は新書の性質上10代~20代が対象担っているものの、30代以上でも、自分自身の生き方・キャリアに自信がなくなった、将来どの道を進めたら良いのか、どういった自分を持てば良いのか分からないと悩んでいる方々であれば読んだ方がいい一冊と言える。