「道徳教育」のベクトルを変える

戦前は「修身」という授業があったのだが、それ大東亜戦争後は「道徳」に取って代わった。しかしながら、道徳はどのようにして設置されたのか、そして評価はどのようにして行われるのか、その背景と問題点などについて取り上げているのが本書である。

第一章「道徳科設置の背景」
「道徳」の授業ができたのは1950年代、いわゆる「逆コース」と呼ばれる時代であった。その背景にはどのようなことがあり、なおかつ教科書ができるまでのプロセスを追っているのが本書である。

第二章「道徳科の抱える問題点」
道徳の授業における「狙い」とはいったいどこにあるのか、人間としての道や考えなどを説いたり、議論したりするのだが、その道徳教育について、方法や実現性などの観点から問題点を指摘している。

第三章「評価に関する諸問題」
そもそも道徳における授業について、どのように評価をしたら良いのか、その答えは未だもって分からないのだが、それは議論や実際の評価をすることによって変わっていく。その変わってたことの流れと問題点について取り上げている。

第四章「実践の再構築―アイディアとヒント(視点)」
道徳の授業は指導要領にはあり、なおかつ教科書はあるが、教師自身が作った教材にて授業を行うケースも少なくない。道徳とはどのようにして教えていくか、教師自身がそれを考え抜いた一つの「解」でもあるという。

道徳教育は戦後からずっと続いているのだが、そもそも道徳教育とは何か、その根本と問題点を知ることができた一冊である。人間として、そして日本人としてどのように生きたら良いのか、答えはないように見えて、その答えを見つけるような授業、道徳にはそれがあるのかもしれない。