イノベーションはなぜ途絶えたか―科学立国日本の危機

イノベーション(改革)は人にしても、企業、さらには業界にしても必要なことであるのだが、往々にしてイノベーションは失敗することがある。本書は日本における科学や産業におけるイノベーションが途絶えたことを主張しており、かつその原因としては日本の社会構造そのものにあるとしている。その理由と、対策について本書にて述べている。

第一章「シャープの危機はなぜ起きたのか」
今でこそ台湾の企業である「鴻海」の傘下として復活をとげているのだが、それまでは液晶事業への過剰な設備投資の影響もあり、それを活かすことができなかったことにより存亡の危機に瀕していた。かつてはイノベーションを繰り返し行われ、日本の産業の根幹の一つを担っていただけに、なぜ存亡にさらされたのか、設備投資以外にも原因があった。その要因として「山登りのワナ」があるという。

第二章「なぜ米国は成功し、日本は失敗したか」
日本では様々なところで「改革」「イノベーション」と叫ばれており、行動をする人・企業もいるのだが、アメリカのそれよりも、鈍化している印象が強い。その要因としては日本とアメリカの社会的なアクティビティの差が現れているという。

第三章「イノベーションはいかにして生まれるか」
そもそも根本的な話になるのだが、「イノベーション」はどのようにして生まれるのかを見ていく必要がある。技術・科学における研究・開発のなかでイノベーションを起こすきっかけと本質について取り上げている。

第四章「科学と社会を共鳴させる」
とはいえ日本の科学は先を行っていることがある。しかしそれを社会に転用し、両方のイノベーションを共鳴させることは難しいと言える。その要因と、共鳴させるにはどうしたらよいのかを取り上げている。

第五章「イノベーションを生む社会システム」
イノベーションを次々と生むためには社会システムそのものを変化することが求められる。その中でも企業のみならず、大学の制度改革、そしてイノベーションを補助する役割を担う「イノベーション・ソムリエ」の育成などを挙げている。

イノベーションは社会や経済など、ありとあらゆる面において必要なことである。しかしながら「イノベーションを起こす」とひとえに言っても「ではどのように行うか?」と問われると答えに窮してしまう人がおおいことだろう。そのことも途絶えた要因の一つなのかもしれないのだが、行動の中でマクロ単位にてどのように起こしたらよいのかという指針を指し示している一冊が本書といえる。