平成の藝談――歌舞伎の真髄にふれる

歌舞伎の世界は絶えず変化する。2020年5月には十一代目市川海老蔵が十三代目市川團十郎白猿を襲名する。令和の時代になっても歌舞伎は常に進み続けている。

そこで平成の時に活躍した先人の至芸はどのようなものだったのか、そしてこれからの歌舞伎はどうなっていくのか、本書は平成における歌舞伎がどのように変わっていったのか、そしてどのように伝承していったのか、そのことについて取り上げている。

第一章「舞台の心得」
平成の時代の中で逝去した役者も少なくない。名優としては二代目尾上松緑、七代目尾上梅幸、六代目中村歌右衛門、十八代目中村勘三郎、十二代目市川團十郎、十代目坂東三津五郎がいる。それぞれの芸人はどのような芸を遺していったのか、どのような心得で芸を磨いていったのかを取り上げている。

第二章「「型」というもの」
元々歌舞伎には「型」と呼ばれる演技の根本がある。その根本である型に命を吹き込み、芸として昇華することが、歌舞伎役者には持つべきものとしてある。その型の伝承について先人たちはどのように行ってきたのを取り上げている。

第三章「伝承と革新と」
そもそも歌舞伎は長い歴史によって進化と伝承を繰り返してきた。もちろん新しい歌舞伎は今もなお活躍している役者によって生まれ、なおかつ育っていった。さらに先人も新しい型や解釈によって伝承と革新を舞台でもって行ってきた。

第四章「終わりなき芸の道」
芸に終わりがない。この世を去るまで芸事は磨き続けられる。それは今も活躍する役者も先人たちも一緒であり、そのことによって今日もまた歌舞伎が続いている証拠である。

芸談自体は芸を語るだけでなく、先人たち、そして今いる役者たちの芸を知ることによってこれからどのような進化が必要なのかという「指針」を知ることができるものである。30年の間あった平成の時代のなかで歌舞伎はどのように変化をしてきたのか、そのことを知るきっかけとなる一冊である。