爽年

石田衣良氏の「娼年」シリーズの一作である。「娼年」シリーズはボーイズクラブのオーナーとして男女関係を描いている、どちらかというと「官能」と呼ばれる表現が多い。表紙ではそのようなイメージではもたれないのだが、中身を見ると、けっこう官能的な表現が多かった。とはいえ「恋愛」となると官能的な部分は少なからずあることはわかるのだが、よくある官能小説と、性的表現が使われる恋愛小説とを比べると、本書はその「中間」と言ったイメージである。

イメージの話はさておき、本書は「娼年」シリーズの中でも大詰めにさしかかったところである。元々ボーイズクラブで働いていた青年が自らクラブのオーナーを引き継いだと言うところから物語が始まる。前のオーナーが摘発され、クラブは一時の解散、そしてその前のオーナーへの思い、そして永遠の別れ、さらには周囲を取り囲む女性たちとの関係を描いている。

ここでのメッセージは「愛」とは何か、「性」とは何か、「男女の関係」とは何か、と言うのを発している。もちろん読み手にもそれらを考えさせられるようにできている一冊と言える。