寄り添うツイッター わたしがキングジムで10年運営してわかった「つながる作法」

ここ最近、私のマイブームとして企業公式ツイッターを観ることである。企業によっては真面目に告知だけを行っている企業もいれば、法令遵守の範囲内で荒ぶる企業(どこの地域のどこの企業かは言及しないが)もいる。実際に後者の方がかなり面白くあり、なおかつある種宣伝効果を見出し、さらには異業種でのコラボレーションを生み出すと言った効果もあるため侮れない。

その中で本書は、企業公式ツイッターの「キングダム」こと「キングジム」(以前映画の地上波放送で荒ぶっていた)

その中の人がなぜ公式ツイッターをつくり、投稿誌続けてきた先に何を見出したのかを取り上げている。おそらく間違いが無ければ、本書の著者は8月末をもって担当から離れ、9月から別の担当となった(公式では「三女」となっている)。

第1章「キングジムを好きになってほしい 「中の人」として最初に考えたこと」

キングジムの公式ツイッターの担当は1人で行っている。ただ歴代で言うと本書の著者、現在の担当(三女)と、過去にもう1人担当していた(「妹」と表記されている)の3人いる。そもそも立ち上げ当初は先月末まで担当していた方が行った。実際に何を投稿したら良いか分からない中で暗中模索しながら投稿し続けていくうちに、顧客の声を直に聞くこととなり、改善につなげること、さらには時事的なツイートなどを利用しているなどの工夫を凝らしている。さらには「目標」は存在するのだが、必達のものではなく、「目安」として置くだけで、ニュートラルに投稿をする事を念頭に置いているという。

第2章「フォロワーと深くつながりたい こんにちは、「近所のキングジムさん」です」

ツイートにリツイートしたり、返信したりする方々に寄り添いながら、いかにして双方向のコミュニケーションを行ってきたのかを取り上げている。メーカーではあるものの、近所の人のような意識で投稿しており、中にはくだらなく面白いツイートも生まれ(中には大喜利状態になることも)ていった。

第3章「アカウントに「人格」が生まれた 「キングジムさん」が「姉さん」になったワケ」

実は本書の著者であり、先月まで担当していた方は「姉」と表記されていた(しかしリツイートや返信の中には「姐」と表記されていたことも)。企業のため顧客との距離も考えて敬語にしていたのだが、近所の人などの親近感のためか、やりとりしていく内に「カーチャン」や「おかん」など母呼ばわりされた。それがいつしか「姉」や「姐」と呼ばれ、実際に「姉」という名前でお便りなどが届くようになったという。

第4章「PR担当者としての矜持 「広報×ツイッター」、二足のわらじの相乗効果」

ツイッター担当にしても、広報担当にしても特に気をつけているのが「炎上回避」をはじめとした「危機管理対応」である。企業の中にはツイートで炎上した事例もあるため、それを回避、さらにはいざ起きてしまった場合の対策を行っていく必要がある。その方法ばかりでなく、ツイッターをはじめとしたSNS担当での企業交流なども取り上げている。

第5章「想像もできない世界が待っていた 企業の垣根を超えた「つながり」」

もはや当たり前となっている企業同士でのツイッター交流を取り上げている。最近では企業の規模・業態にかかわらず、交流は盛んに行われており、地域によっては「●●Twitter会」といったハッシュタグをもって交流を行っているところもある。しかも交流を通して新しいサービス・商品・イベントなどが生まれるなどの相乗効果を生み出すことに成功した。本章ではその事例をいくつか取り上げている。

「寄り添う」と言う言葉があるのだが、寄り添い方自体もそれぞれであり、なおかつ寄り添いによって新たなコラボレーションを生み出すことに成功した。今となっては当たり前にある企業公式ツイッターの原型の一つを生み出したキングジムは、三女に担当が変わってからどのような相乗効果をもたらすのか期待したい。