「繭の季節」と言うタイトル自体が、少し前の世相を見ているようでいてならなかった。一昨年の3月から始まった新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「自粛」が次々と行われ、ステイホームまであり、巣ごもりを行っていくようになる。あたかもそれが虫における「蛹」「繭」の様であるかのように。
そのような中で「事件」が起こり、その解決に乗り出すというのが本書である。ミステリーであるのだが、当時の世相をふんだんに盛り込みながら、なおかつAIやロボットなどの技術も取り入れる、ある種近未来のように見えながらも、これもまた当時の世相である。
とはいえ、「フィクション」の要素はこの「繭」にもある。日本では自粛を推進するとはいえどロックダウンのように「強制」している描写がある。そのような中での「事件」のため、そこにどのようなトリックがあるのかというミステリーならではの魅力も秘められている。