NHK改革

本書はNHKの在り方を批判しながらも改革への提言をしている1冊である。
ちなみに本書の著者は34年もの間NHKに勤めてからまた大学に転じたと言うのでNHKの畑にどっぷりとつかった人であるが、著者自身はNHKについて語る資格はないと言っているが、むしろ著者だからでこそ語れることがあるのでむしろありがたいと私は思う。

まず第1章は「NHKと政治」を題してNHKと政治との距離について書かれているがここでは「「ETV2001」番組改編問題」について取り上げたい。問題となった「ETV2001」は「従軍慰安婦」など戦争における性犯罪問題について取り上げられた。ちなみにこれにあたっての素材となったのが2000年12月8〜12日に行われた「女性国際戦犯法廷」というのが行われた。

実際これ自体は事後法で裁いているだけにとどまらず、さらに被告25人は昭和天皇は東条英機などの軍指導者は全員亡くなっており、しかも法廷としては常識とも言うべき弁護人がいないという一方的に裁いたというとんでもない法廷であった。ちなみに朝日新聞はこの法廷に関する供述や証拠などを連日報道したことでも知られている。

もっと言うとこの主催者の1人に朝日新聞の元編集委員がいたことからこうなったのであろう。問題となったのはこの「ETV2001」の番組ではNHKのプロデューサーが取材を行い、しかも主催者の意見をそのまま取り込んで番組を編成したことにある。これは批判的・両義的側面から番組を編成するに当たってあるまじきことであるが、NHKはそれについての贖罪意識というのがないという表れなのかもしれない。

ちなみにこの番組については安倍前首相や中川昭一氏がこれについて「内容に偏りがある」とした指摘をした。しかし朝日新聞はこれを「圧力」と歪曲し報道したことから問題となった。

後に訴訟となり最高裁まで続いたが結果的にNHK側の勝訴であった。これについて週刊朝日でジャーナリストの田原総一朗氏や新聞赤旗で東京大学大学院教授がそれについて「最悪の判決である」や「言論の自由を侵害している」という声が強かった。実際に判決の内容については私は読んだことはないのだが、取材の手法を見たら不十分ということと圧力が認められなかったという。これについては朝日を除いた各紙もそれにおおむね賛同している。しかし朝日だけは社説などで批判的に取り扱われている。新聞のことについてはこれまでにする。

第2・4・5章については受信料制度と各国の公共放送との比較について書かれている。公共放送の受信料について各国との違いというのは日本では罰則がつかないというところにある。しかし最近では簡易裁判にかけられることもしばしばあるという。それに比べてほかの国では罰則を設けている国もある。そこでは支払い率は約90%以上に達しているところが軒並みある。それともう一つが受信料収入が全体の数割にしか至っていないところにあるという。総務省のデータであるが日本では収入の約96%が受信料で賄われているという(ただこれについては疑わしいところもあるが)。

NHKは唯一広告収入に頼らず受信料などで賄われている放送局である。当然国民から受信料としてもらっているため国民のために、そして国のためにどうあるべきかというところを考えてほしいと言いたいところだが、まずそれをやる前に内部腐敗について食い止めてほしいところが強い。

というのは今年の1月にNHKの職員のインサイダー取引が発覚したことやそれだけではなくNHKの職員による犯罪も後が立たないというところである。NHKだけではなくてもみんなやっているのではないかという言い訳も出てくるようだが、NHKほど国民に受信料という名の収入をもらっていることでの責任というのは大きい。

そういうところを考えると、誰でも同じではなくNHKだからでこそという独自の色(但し良い意味で)を出すことが一つ。そして国民に対してためになる放送の在り方を見直すべきというところが一つである。とはいえNHKにはそういった事情能力というのがあるかというと疑わしいところもある。そう考えるとNHK改革を提言しても無駄ではないのかという絶望感でさえて漂ってしまう。誰か本当に改革できる人がいればいいのだが。

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