シルバー川柳8 書き込んだ予定はすべて診察日

川柳は5・7・5にてつくる事ができるのだが、俳句と異なる点としては季語は入れるという制約がないことにある。そのため自由の度合いが高く、喜怒哀楽の状況を面白おかしくしたためることができるのも川柳である。

本書における「シルバー川柳」は全国有料老人ホーム協会主催の下で、高齢者の様々なことを川柳にしているのだが、その8弾としてどのようなものがあるのか取り上げてみる。

<Ⅰ>

・「インスタバエ」 新種の蠅かと孫に問い(p.9より)

最近若者の間で流行しているInstagram、そこで撮った写真が美しく、もしくは印象的に映えるものとして「インスタ映え」と言われているのだが、世代によっては理解できないこともある。まさか新種の「蠅」として認識されているとは思ってもみなかった。他にも高齢者ならではの介護や病院にまつわる事情も川柳として挙げられている。

<Ⅱ>

・見学会 昔は宅地 今は墓地(p.41より)

最近では「就活」ならぬ「終活」が言われるようになる。もっとも私自身も書評にて「終活」にまつわる本を取り上げたのだが、この「終活」自体は高齢者じゃなくてもどの世代でも行うべきと書いたのだが、齢を重ねると自分自身の終わりについてより意識するようになる。そのため本章のように見学会が墓地だったり、終活ノートが贈られたり、終わった後のことを意識せずにはいられなくなってしまう時期なのかもしれない。

<Ⅲ>

・どなり合い かと思いきや 立ち話(p.66より)

齢を重ねると体のありとあらゆる所が衰えてくる。もちろんそれを防止するために鍛えたり、ケアしたりするのだが、年には勝てないのが現状である。そのため会話でも耳が遠くなり「どなり合い」のような状況になることさえもあるという。

<Ⅳ>

・ばあさんの 運転怖く 足が攣(つ)る(p.95より)

最近高齢者の危険運転が社会問題となっているのだが、そのことを如実に表した川柳と言っても過言ではない。もっとも事故にならなくても、ヒヤリとするような運転に乗っている人も周囲もヒヤヒヤしてしまうようなことが往々にしてある。

高齢者の喜怒哀楽などを当事者・周囲問わずして川柳にするとこれほどまであるとはと思ってしまう。昨今超高齢社会と叫ばれ始めると、本書以上にさらなる傾向・エピソードが出てきて、それがシルバー川柳としてさらに追加されるのではないかと本書を読んで思ってしまった。