「公益」資本主義 英米型資本主義の終焉

資本主義の概念自体は古代から存在していたのだが、実際に提唱され始めたのは18世紀半ばにアダム・スミスやデイヴィッド・ヒュームらによって「見えざる手」が提示された時からといわれている。そこから先進国を中心に「資本主義」の概念が広がりを見せた。もちろん時代と共にその在り方は変わっていっているのだが、本書で取り上げる「資本主義」の変化については、英米式の「株主」を中心とした資本主義から「会社は社会の公器」と定義して、「公益」と題した資本主義の在り方に変化することを提言した一冊である。

1章「グローバリズムの終焉」
その背景としてはいくつかあるのだが、その中の一つとして「グローバリズム」が終焉にさしかかっているというのである。もっとも昨年アメリカにてドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任したときにはアメリカの中でも政治的なグローバリズムが衰退している様相を見せたのだが、経済的な観点からも格差やテロの拡大、さらにはヨーロッパでもイギリスのEU離脱によってグローバリズムの動きが終焉しつつあるのでは無いかと分析している。

2章「日本と世界を滅ぼす株主資本主義」
これまでの資本主義の在り方は会社における資本主義であるのだが、その多くは「株式会社」であり、その株式会社の主権としては「株主総会」である。その「株主総会」にて出席する方々が「株主」であり、その株主たちの物言いにより、会社の在り方も変わってくる。そのため株主の良いようによっては会社が良くなる一方で、会社どころか経済を壊しかねないことを著者は危惧している。

3章「アメリカでアメリカモデルの限界を知る」
今の「株主資本主義」を形成付け、世界的に発信してきたのはアメリカである。そのアメリカでは現在における「株主資本主義」の概念が崩壊しつつあると指摘している。その崩壊の在り方はどのようなものなのかについて取り上げている。

4章「公益資本主義とは?」
では「公益資本主義」とはいったい何なのか、それは

「「企業の事業を通じて、公益に貢献すること」です。より具体的に言えば、「企業の事業を通じて、その企業に関係する経営者、従業員、仕入れ先、顧客、株主、地域社会、環境、そして地球全体に貢献する」ような企業や資本主義のあり方です」(p.158より)

とある。企業を株式会社として「株主」に貢献するというよりも、むしろ「CSR(企業の社会的責任)」の特に社会貢献における責任に特化して「公益」と定義している。論者によっては「理想論」と切り捨てるかもしれないのだが、なぜそれが必要なのかといった所の中で「概念」の部分を論じている。

5章「公益資本主義の12のポイント」
公益資本主義においては様々な「メリット」や「ポイント」があるのだが、本章ではその中でも選りすぐりの12点のポイントにして取り上げている。もっともその公益と株主との違いにフォーカスを当てている。

6章「公益資本主義・実践編―モノづくり最適国家の実現」
本章では実践編としているのだが、具体的に「公益資本主義」とするためには枠組みをどのように構築したら良いのかを提言している。

7章「対談 GDP600兆円実現のために」
本章では著者と内閣官房参与を勤めたことがあり、京都大学大学院工学研究科教授を務める社会工学者の藤井聡氏の対談でもって格差是正やGDP600兆円を目指すための経済や社会のあり方の未来像を描いている。

本書を読んで松下幸之助の

「会社は社会の公器」

という言葉を思い出した。会社というと利益を生み出し、株主に還元すると見えがちであるのだが、生産して利益を生み出し、社会に還元する、そのあり方を「資本主義」として社会に還元するためのこととして「公益」を提唱しているのではないかと本書を読んでそう思えた。

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