「超」入門 空気の研究 日本人の思考と行動を支配する27の見えない圧力

著者の鈴木様より献本御礼。
本書は今から41年前に上梓された評論家である山本七平(やまもとしちへい)の「「空気」の研究」を「超入門」という形にて解説されたものである。ちょうど良いタイミングなのかどうなのか不明だが、本書が上梓されるのと同時期に文春文庫にて文庫化されることから、本書と元となった本を比較すると良い。

本書の話に戻すと、かつては「KY」、昨年は「忖度」と流行語になったのだが、周囲の状況に対して同調をするような圧力を持つことが自分も含めてある。その日本人の思考や行動を支配する存在として「空気」と断定しているのが本書であり、「「空気」の研究」であるという。そのメカニズムと対策はあるのか、そのことについて解説をしている。

第1章「日本を支配する妖怪の正体―日本人が逃れられない「見えない圧力」」
私自身も「空気」はつくづく「見えない独裁者」や「見えない妖怪」とさえ思えてならない。特にメディアではそのことが顕著であり、突拍子もない発言によって、いわゆる「言葉狩り」と言う名の魔女裁判を行うように糾弾をして行くことが少なからずある。もっとも政治的な議論にしても、結果を求めているにもかかわらず、その成果が全く見えなくなってしまい、言葉だけが一人歩きとなり、徹底的な批判が展開されるようなことが最近のニュースではよくある。「メディアのせい」といえばそれまでかもしれないのだが、その裏には日本人ならではの「空気」と言う名の「圧力」があるといえる。

第2章「なぜ日本人は集団だと凶暴になるのか?―日本的ムラ社会を動かす狂気の情況倫理」
日本人はかくも「集団主義」であり、なおかつ善悪の基準も集団によって支配される。根本的な善悪といったことも、同調圧力の中では個人的な考えがなくなり、それを外れるとなると「いじめ」になることも少なくない。

第3章「なぜ日本人は感染しやすいのか?―日本人を思考停止に追いやる3つの要因」
日本人は「集団主義」であるのだが、その集団主義の構成される要素の中で重要なもので「空気」がある。その「空気」に「感情」を持つことによって思考停止に陥る、あるいは拘束力が増すなどして自身の思考力だえも奪ってしまい、正しい判断ができなくなってしまう。

第4章「私たちはこうして思考を乗っ取られる―空気の拘束を生む3つの基本構造」
日本のメディアはかくも「空気」を生み出す根源にもなり得る。昨今でも芸能・スポーツ・政治に関するニュースの多くは週刊誌・新聞・テレビなどのメディアによって作られ、検証することによって間違いであることが分かったとしても空気によってかき消され、誤ったものでもかくも正しいように扱われることも少なくない。その構造は全部で3つあるのだという。

第5章「なぜ日本人は「常識」に縛られてしまうのか?―新たな拘束力となる水の思考法」
私自身は「常識」という言葉が嫌いである。常識というと普遍的な考え方をよく言われるのだが、実際はその人の考え方を他人に押し付ける常套句にもなりかねない。アインシュタインの名言として、

「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう」

という言葉があるように、それを空気によって強要するようなことも往々にしてある。しかもそのことが科学的な判断などができたとしても、全くまかり通ることが許されないことにもなる。

第6章「「日本劇場」を操る「何かの力」―支配者にとって空気は世論をつくる最強の武器」
空気が支配されることによって、あたかも「劇場」と呼ばれるようなことにまでなる。もっとも日本人は「劇場」と呼ばれるように、たとえ虚構であってもインパクトが強いものを好む傾向がある。

第7章「どうすれば空気を破壊できるのか?―巨大な圧力に抵抗する4つの方法」
ではどのようにして空気を破壊し、独自の考えや、持っているものを悲喜だたせるのか、そこには思考や相対化などの方法があるのだという。

当ブログにおいて「空気」に関する本は、社会的なものから、それを変えていくためにどうしたら良いのかなどの方法に至るまで数多く取り上げている。その現実について様々な本が展開とされた元となったのが、「「空気」の研究」であり、それをわかりやすい形で紐解いたのが本書と言える。