ネット右翼とは何か

そもそも「ネット右翼」と言うことばができはじめたのは、私の記憶では12年ほど前である。保守を標榜し、憲法改正を推進し、中韓の批判を行うなどが中心であった。もっとも私自身も当時はその一人であり、当ブログの初期の時はやたらに中韓批判、さらには左派批判を繰り返したほどである。今となってはあくまで書評中心であるため、ネット右翼から脱却はある程度している。

私事はさておき、ネット右翼の存在はインターネットにおける表現が一般化され、広がりを見せた時からずっと存在している。そのネット右翼の思想と政治や文化はどのようなものなのかを取り上げている。

第1章「ネット右翼とは誰か――ネット右翼の規定要因」
通称「ネトウヨ」と呼ばれるネット右翼は、集団と言った定義がなく、むしろネット右翼になる「傾向」としての「規定」が存在するのだという。「嫌中韓」「保守」「排外主義」などがあるという。

第2章「ネット右翼活動家の「リアル」な支持基盤――誰がなぜ桜井誠に投票したのか」
ネット右翼からなる思想は、実際のリアルの活動にまで及ぶほどだった。本章のサブタイトルである桜井誠もその一人で現に2016年の東京都知事選挙に立候補したという経緯もある。その経緯や支持基盤について取り上げている。

第3章「ネット右翼の生活世界」
ネット右翼の生活の傾向はどうなっているのか、もっともネット右翼にしても様々な「傾向」があるという思想の根幹を成す一つである「生活」によって変わってくると言う。

第4章「ネット右翼と参加型文化――情報に対する態度とメディア・リテラシーの右旋回」
ネット右翼の文化はとにもかくにも「参加型」である。「ネット書き込み」にある掲示板での議論を中心としたことで主張を繰り返し、さらには反対意見を排斥するといったこと、さらには新聞やテレビといった既存メディアに対する批判・非難も活発的に行うなどが主として挙げられる。

第5章「ネット右翼と政治――二〇一四年総選挙でのコンピューター仕掛けのプロパガンダ」
実際にネット右翼は政治世界にどのような影響を与えてきたのか、2014年に行われた衆議院総選挙の傾向と共に考察を行っている。

本書は世論調査やSNSなどの書き込みなどを分析することでネット右翼とはどのような存在なのかを見ているのだが、実際にネット右翼にしてもここ10数年で変化をしている。媒体の変化もあれば、思想での細かなものもある。とはいえ、ネット右翼の根幹は10数年見てきただけでも変わりはない。その変わりないネット右翼の根幹のを知ることのできる一冊であった。