コンビニオーナーになってはいけない

コンビニオーナーの募集の広告を何度か見たことがある。見てみると経営者としての体験談などをポジティブに取り上げられているのだが、実態はどうなのかというと、個人事業主でありながら、本部から来る厳しい要求に応える必要があるというものである。

特にここ最近では24時間365日の運営が厳しくなり、時短営業、さらには休業日を設けることをここで行おうとするが、それをすると契約解除するといったニュースも出てきており、私の近くにあるコンビニの1店舗が先日から時短営業を開始した。それ程まで苛酷なコンビニの状況であるのだが、オーナーになった現場の実状を余すところなく伝えているのが本書である。

第一章「私たちは、加盟店オーナーという奴隷になりました」
コンビニオーナーは実際のところ「個人事業主」の扱いである。扱いであるのだが、実際は「本部の言いなり」になって働いている、いわゆる「雇われ店長」や「雇われ社長」と言うような扱いとも言える。本書で言うところのコンビニオーナーはコンビニの「加盟店」として経営していく立場であり、実質的に従業員と業務は変わらない。しかしながら経営的な責任はオーナーに背負わされるという。そのオーナーになっていく上で、本部による「研修」が行われるのだが、その実態が想像を絶していた。

第二章「24時間365日「開いててよかった」の裏側で」
いつでも営業しているコンビニであるのだが、ある種社会的な「インフラ」の役割となっている。元々「コンビニエンスストア」の「コンビニエンス(convenience)」は「便利、簡便(「広辞苑 第七版」より)」とあるように、便利な店というものである。しかしながらできた当初は24時間営業ではなく、店にもよるが「セブンイレブン」ができた当初の如く朝7時から夜11時までといった時間帯だったのだが、いつしか24時間営業が行われる様になった。なった時のフレーズが本章のタイトルである「開いててよかった」だが、オーナーはそういった感情ではなく、むしろ24時間営業を回すことから肉体的・精神的な疲弊を被ることになった。

第三章「衝撃! コンビニの現場」
本章では著者であるユニオンに所属しているコンビニオーナーの方々との対談を行っているのだが、実際にオーナーをやっていた中で本部から届いた命令について取り上げられている。その中身は本章のタイトル通り「衝撃」である。

第四章「契約更新拒否という脅しの果てに」
冒頭でも述べたような時短営業や休業をするとなるとタイトルの様な更新拒否ならまだしも、一方的に解除を通達するという。ようやく大手メディアでも明るみに出てきたのだが、実際の契約更新はメディアでは出てこないほどの苛烈な内容だった。もっとも加盟店として、オーナーとして本部のブランドを使うための「契約」をオーナーになってから行うのだが、契約にも期間があり、更新を行っていく必要がある。その「更新」についても不透明なものが多いのだという。

第五章「諸悪の根源? コンビニ会計を読む」
コンビニエンスストア業界の企業は軒並み利益が出ている。しかしその利益には、ある「カラクリ」があるのだという。その「カラクリ」が本章で取り上げる「コンビニ会計」であり、著者は「諸悪の根源」だという。

第六章「オーナーと本部 共存共栄のモデルを探して」
コンビニ業界も変わりつつある。その変わっていく中でユニオンの存在も必要であり、著者も設立している。そのユニオンとの団体交渉を行っていくことにより、本当の意味での共存共栄が行えるという。

本書はコンビニオーナーを主軸にしているのだが、そもそもコンビニ業界としても大きな岐路に立たされている。労働環境はもちろんのこと、ビジネスモデルにしても変化が求められており、「便利」の在り方も変わりつつある。その変わっていく中で本当に共存共栄が芽生えるのか、定かではない。

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