ぼくらがアニメを見る理由――2010年代アニメ時評

今もそうかもしれないのだが、2010年代はかなり多くのアニメが放映されたと言える。媒体としてもかつてはテレビ放映だけだったのだが、やがてNetflixなどのインターネットメディアでの独占放送まで出てきており、1年だけでも100なり200なりの作品が出てくるほど。中には劇場アニメとなる映画で放映されるアニメも数多く出てきては、海外で評価されるものも出てきた。さらに劇場・テレビなどに限らずアニメの中には昨年放映された「鬼滅の刃」の如く社会現象にまで発展した事例もいくつかある。

冒頭で語るだけでも数多くなってしまうのだが、それだけ2010年代のアニメはおびただしいほどの数を持っており、その中には玉石混淆ともいえる。本書は2010年代のアニメの傾向について著者自身が「アニメの門」というWebサイトにて取り上げられたものを書籍にして改変しながら収録している。

第一部「2010年代のアニメ作家たち」
2010年代に代表される作家を4人とスタジオジブリを取り上げている。その4人は「天気の子」「君の名は。」で名を馳せた新海誠、「この世界の片隅に」の片渕須直、「リズと青い鳥」「けいおん!」「たまこまーけっと」の山田尚子、そして「おおかみこどもの雨と雪」「未来のミライ」の細田守である。それぞれの作家やジブリから生み出された作品を主軸にして、どのような傾向にあるのかを取り上げている。

第二部「作品は語る」
本章では2010年代の作品が「ほとんど」収録されている。その「ほとんど」がキーであるが、中には2000年代(「true tears」など)のものが入っているのだが、アニメの傾向としてのカテゴライズを行うためにあえて取り上げているのかもしれない。2010年代は本当の意味で多くのアニメが放映されたのだが、本章では「描き方」「キャラクター」「表現」「海外」と4つにカテゴライズして全部はさすがに収まりきらないため、特に印象的な作品を取り上げ、批評を行っている。数もそうなのだが、種類・傾向も多くあるため、4つに分けることだけでも非常に難しいなかで、この4つに分けたのが見事と言うほかない。

一つ一つを見ていくだけでも本当の意味で数多くある一方で、アニメとしての方向性はどうなっていくのかを考えさせられる。昨今では新型コロナウイルスの影響により、放送が延期になったり、12話構成の途中で次回放送が未定になったりと、アニメ製作現場も混乱に陥っている。その中で2020年代としてのアニメも醸成され始めている。その中で著者、そして「アニメの門」ではどのように論評していくのか楽しみである。