年中行事を五感で味わう

あけましておめでとうございます。本年も「蔵前トラックⅢ」をよろしくお願い申しあげます。早速新年最初の本を紹介いたします。

年中行事の始まりは元旦から始まる。その後から春夏秋冬と四季折々の年中行事が行われる。四季折々なところも日本の風習の良さであり、なおかつ、本書のタイトルにもあるとおり「五感」でもって味わうことができることもまた、日本文化の良さとして現れている。今日は年はじめの元日だからでこそ、1年の行事をみていこうと思う。

第一章「新春」
新春行事の事始めとしてまずは「味」がある。「味」というとおせちと連想してしまうのだが、本章では、雑煮と若水が取り上げられている。雑煮は地域、さらには家庭によって異なるので、割愛するのだが、若水については少し取り上げる必要がある。「若水」は元旦に井戸から汲み上げた水のことを表しており、

「年のはじめ、朝一番の水は邪気を払ってくれる縁起の良い水。夜の明けやらぬうち、誰にも会わない間に汲むと吉とされているそうです」(p.5より)

という。今では井戸から水を汲むことがなくなっているので「若水」についてあまりピンとこないのだが、「若水」の名残として残っているのが「生麩(なまふ)」である。「生麩」をつくるためには良い水が必要になるため、「若水」に関連されているという。そのことから「若水」で作られた生麩を使ってお雑煮にして食べたり、麩まんじゅうなどの甘味ものにして食べたりする。
元旦が終わった翌日には書き初め、三が日が終わった後に「粥」にして食べる「七草」、そして一連の正月行事の締めくくりとして「どんど焼き」もある。

第二章「春」
次は春であるが、実質的に真冬にあたる2月も「春」として取り上げられている。その2月にあるのはなんと言っても「節分」である。節分の別名は「鬼やらい」と呼ばれており、病気・災害を「鬼」に見立て、豆で邪気払いをすると言われているが、なぜ豆まきで邪気払いになったのかを言及している。節分の後にはひな祭り・お花見・端午の節句なども本章にて取り上げられている。

第三章「夏」
本書における「夏」は6月から始まる。6月になると初日にあるのが「氷の節句」「氷の朔日」が挙げられ、翌月には「山開き」、「土用の丑」や「花火」「灯籠流し」がある。
本章で注目したのは8月に行われる「六道参り」である。それは、8月8~10日に京都市東山の六道珍皇寺に参り,迎え鐘をついて精霊を迎える行事であり、ちょうどお盆の直前に行われる。つまりこの「六道参り」によって京都ではお盆の始まりを迎える。

第四章「秋」
夏が終わり秋を迎えると「重陽の節句」「月見」などが挙げられる。本章では10月19・20日に東京・日本橋で行われる「べったら市」に興味を持った。東京で働くことがほとんどなのだが、日本橋で働くことは一度もないため「べったら市」は本書を出会うまで知らなかった。「べったら市」はその名の通り東京・日本橋にある宝田恵比寿神社周辺で「べったら漬け」を売るというものであるが、歴史を紐解いてみると芭蕉の句もあったという。

第五章「冬」
最後は、ちょっと前にあった冬行事・年末行事である。11月には酉の市があり、12月には冬至、そして年末には除夜の鐘がある。特に除夜の鐘は私自身も故郷・旭川で何度かやったことがある。実家の近くに寺があるため、除夜の鐘をついたのだが、様々な方が除夜の鐘をついていたことを記憶している。

1年中の行事を色々見てみるとたくさんある。しかも「五感」で愉しめることがたくさんあるため、1年中愉しめることが多いと言うことを気づかせてくれるそういった一冊である。