おそらく本書ほど現在の状況にクリティカルな一冊はないのかもしれない。本書の舞台は1990年代におけるHIV(エイズ)・結核・マラリアの感染症対策に向けて動いた「国際基金グローバルファンド」を表しているのだが、実は現在蔓延している「新型コロナウイルス(COVID-19)」の対策にも動いている。本書はその組織ができ、そして活躍するまでの軌跡を取り上げている。
第一章「世界最強の組織を創る」
90年代のアフリカは「暗黒大陸」と呼ばれていた。様々な風土病が蔓延していた。その一方である病気が大流行し、「暗黒大陸」の言葉をさらに増長するものとなった。それは当初「スリム病」と呼ばれており、原因不明とされてきたのだが、後に「HIV」であることが判明したものである。特に働き盛りの世代が次々となくなり、青壮年が減少し、子どもと老人がほとんどになるという異様な状況だった。その現状を打破すべく、設立したのは「国際基金グローバルファンド」である。当時の国連事務総長であるコフィ・アナンや、当時の首相だった森喜朗も設立に名を連ねた。
第二章「ビジョンを描く」
ファンドというと「お金儲け」と言ったイメージがつきまとう。元々「ファンド」とは、
「1.基金。資金。
2.公債。国債。
3.投資信託。また,投資信託によって運用される資金。」(「大辞林 第四版」より)
とある。よくあるイメージでは3.を意味しており、本書における「グローバルファンド」は1.を意味している。資金を持って3つの感染症を撲滅することが大義としてある。その撲滅に向けてどのようなミッションを組み、そこから目標・戦略・計画へと落とし込んでいくか、そのことについても取り上げている。
第三章「パートナーシップを築く」
ファンドを設立して、感染症撲滅のために行動をしようにしても、様々な「壁」が立ちはだかる。その壁を乗り越えるためには、様々な「協力」や「連携」と言ったことが必要だった。それが本章のタイトルにある「パートナーシップ」である。そのパートナーシップをいかにして築いたか、その経緯を示している。
第四章「資金を集め、投資する」
「ファンド」であるだけにお金はどうしても必要になってくる。その資金を集めるためにCのように調達するか、支援を乞うかなどありとあらゆる所で資金集めを展開してきた。さらにはその資金をもとにいかに投資し、リスクマネジメントを行うかもカギとなってくる。
第五章「インパクトを示す」
多くの要素をもとに感染症の撲滅に向けて動いたが、どのような成果が表れたのか、本章では2018年度の成果報告書をもとにして取り上げている。
第六章「人材を活用する」
一番活用すべき所は「人」をどのようにして活用していくかにかかってくる。リーダーの選定や育成、そしてマネジメントなどを取り上げている。
第七章「未来を創る」
感染症流行をいかに終息にまで持っていき、撲滅させていくか、そこには多くの課題があるしかし課題の分だけ未来を創ることの価値は高まる。多くの人との関わりによりイノベーションが起こり、そして進化をし、ミッションが達成できるようになるという。
この「国際基金グローバルファンド」は新型コロナウイルスの状況では冒頭に述べた感染症の他に、新型コロナウイルスの対策も並行して進めているという。世界最強の組織と言われるファンドはこれから新型コロナウイルスの撲滅に対してどのように歩を進めるのか見てみたい。
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