今日われ生きてあり―知覧特別攻撃隊員たちの軌跡

鹿児島県知覧町には「知覧特攻平和会館」がある。大東亜戦争の際に帝国海軍によってつくられた「神風特別攻撃隊」、通称「神風特攻隊」が編成された場所である。その特攻隊の隊員となり、散っていった方々がどのようなもの・ことを遺していったのか、その記録が詰まった一冊である。

第一話「心充たれてわが恋かなし」
特攻隊員としての日々、そして日本のために死ねるという誇りと悲しさ、そしてその特攻隊員の家族たちの心境が綴られている。

第二話「取違にて」
本章のタイトルは「といたげ」と読む。元々豊玉姫と玉依姫の伝説が碑文にあったことから来ており、その地域で生きた姿があった。

第三話「海の自鳴琴(オルゴール)」
とある兵隊の知り合いから家族に向けて、兵隊の姿と出撃までのことを丸々手紙にしたためた章である。

第四話「第百三振部隊出撃せよ」
本章の舞台が出撃する際に家族たちに送った手紙を取り上げている。

第五話「サルミまで」
ニューギニア島の北部にサルミ県と呼ばれる所があり、インドネシアなどの東南アジアの拠点の中でも重要な場所であり、基地も存在したほどである。そのニューギニアでの戦いはまさに「地獄」と言う言葉がよく似合っている印象だった。

第六話「あのひとたち」
特攻隊員の周囲の方々は特攻隊員に対してどのような印象と考えを持ったのか、その手記が取り上げられている。

第七話「祐夫(すけお)の桜 輝夫の桜」
散った2人の桜を思い、そしてその2人を通じてあの戦争とは何だったのかを回想した章である。

第八話「海紅豆(かいこうず)咲くころ」
連合国から見た特攻隊員、そしてその家族の姿を中心にした手記を取り上げている。

第九話「母上さま日記を書きます」
特攻隊員が母に向けて書いた手紙が取り上げられている。

第十話「雲ながれゆく」
とある特攻隊員の家族を取り上げている。

第十一話「父に逢いたくば蒼天をみよ」
特攻隊員の手紙の中には父や兄を思う姿もある。本章は手紙もあるのだが、他にも同様の内容の手記も取り上げている。

第十二話「約束」
隊員同士の約束、家族の約束と様々な「約束」がある。どのような約束が手紙や手記に込められていたのか、そのことについて取り上げている。

第十三話「二十・五・十一 九州・南 沖縄・雨のち曇」
本章のタイトルは昭和20年5月11日のことを取り上げている。この日は第七時航空総攻撃を行った日である。その前夜に襲撃する隊員たちは何を遺したのかを取り上げている。

第十四話「背中の静(しい)ちゃん」
とある隊員が家族に向けた手紙と日記を取り上げている。ちなみに本章のタイトルにある「静ちゃん」はその隊員の妹である。

第十五話「素裸の攻撃隊」
アメリカをはじめとした連合軍の攻撃に苦しみながら、特攻として連合軍に一泡吹かせたいという思いがありありと示されている章である。

第十六話「惜別(わかれ)の唄(うた)」
特攻隊員の家族をはじめとした周囲の人物は、隊員に対してどのような「惜別」を行ってきたのかを取り上げている。

第十七話「ごんちゃん」
とある隊員の結婚相手だった方が隊員に対してのこと、そして終戦を迎えた後のことについて綴った箇所である。

第十八話「“特攻”案内人」
知覧町には特攻に関連する所があり、本章では「特攻遺品館」と呼ばれるところで案内をされている方を取り上げている。

第十九話「魂火飛ぶ夜に」
特攻隊員を支えた女学生たちが隊員に対しての思いを綴った章である。

大東亜戦争が終戦して74年を迎える。時代は昭和、平成を経て、今「令和」と呼ばれる新たな時代に入った。しかしながら過去の戦争がいかに凄惨であったか、特に特攻隊員たちはどのような心境で戦ったのか、そして周りの家族や支えた方々はどのような心境だったのか、呼んでいて身につまされる思いをしてしまった。