本書は2つの戯曲を取り上げている。しかもその戯曲は2編とも、著者が主宰する「劇団温泉ドラゴン」にて上演され、特にBIRTHは2015年に韓国の演劇祭に出展され、戯曲賞受賞を受けるなど、評価は高い。
さて本書で取り上げている2つの戯曲はどちらかというと「アウトロー」の色が強い。「BIRTH」は日本が舞台ではあるものの、「オレオレ詐欺(現在は「振り込め詐欺」と言う方が多い)」を主軸としている。事情により、真面目な仕事ができず、オレオレ詐欺で生計を立てるしかなかった男たちが、標的として電話をすると、本当の実母にかけてしまった。そこからオレオレ詐欺がとんでもない方向へと進んでしまったと言うものである。
一方の「SCRAP」は大阪が舞台であるが、元々の出身は朝鮮半島の出身で、稼ぐために大阪に渡った、いわゆる「在日朝鮮人」である。大阪のとある部落にて生活の糧にして行く中で、なぜ日本に来たのか、そして故郷のことなどを思っていたというものである。
「BIRTH」は「家族」、「SCRAP」は「故郷」と人の人生の中で欠かせないものを、独自の視点で浮き彫りにし、メッセージを残しているような戯曲であった。
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